狂ったFRBのシナリオ「金融緩和策QE2」

狂ったFRBのシナリオ「金融緩和策QE2」

FRB(米連邦準備制度理事酋の姿勢は今年の2月以降、突然変化した。それまでバーナンキFRB議長は、「低すぎるインフレ率」に「高すぎる失業率」がしばらく居座るため、長期にわたってQE2を続ける、と言っていた。ところが、欧州でインフレ警戒感が強まり、実際ECB(欧州中央銀行)は予想通り、4月に0.25%の利上げを断行した。

 

米国でも債券市場ではQE2を実施して以降、期待インフレ率が上昇し、もはや誰も[デフレ]を口にする人はいなくなった。その結果、長期金利を下げるためのQE2が、結果的に長期金利を高めてしまった。しかも失業率はFRBの予想を超えて低下している。

 

こうなるとバーナンキ議長もQE2の継続が困難になり、6月末でQE2を打ち止めとする可能性を示唆するようになった。ミネアポリス連銀のコチャラコタ総裁やセントルイス連銀のブラード総裁が追い討ちをかけるように、6000億Jの国債買い入れを縮小すべきとか、年内にも利上げが必要とのろしを上げた。

 

カーネギー・メロン大学のアランールツァー教授も、米国のインフレは消費者物価が示す以上に実際は進行しており、速やかに超過準備を抑制して金融緩和を修正する必要があると主張する。しかし、FRBはその株主でもある金融資本にとって負担となるような金融引き締めを本格化する気も、長期化させる気もない。

 

通常、景気が回復し、インフレが高まるような場合には、引き締め期間が1年以上続くことになるが、今日の米国経済は、そのような通常の引き締めには耐えられない。何より、米国の金融市場は一段とデフレ色を強めており、QE2の打ち止めや引き締め転換は金融市場に一層の負担となるからだ。

 

なにしろ、現在でも米国には6・8兆ごもの住宅ローン担保証券(MBS)があり、そのうちの1.2兆余りを商業銀行が保有している。住宅価格が下落傾向にあり、引き締め転換して長期金利が上昇し、MBSなどの相場が下落すれば、金融市場が不安定になることは目に見えている。

 

こうしたなかで、FRBがQE2を停止すること自体、金融市場には負担となる。FRBによる6000億ごもの国債買い入れは、この間に新規で発行される米国債の7割以上にあたる。FRBがプリンティングマネー(ドル紙幣の増刷)をやめることで「インフレ期待」は落ち着くかもしれないが、一方でこれだけ巨額の国債をFRBが買わなくなった場合、FRB以外の投資家にはめ込むことができるのか。需給面の不安が出ると、米国の長期金利は短期的であれ、大幅な上昇を見せる可能性がある。

米国市場ではNYダウが500ドル超の大幅な下げとなり、3月16日以来の年初来安値を更新。下げ幅は、世界金融危機の最悪期だった2008年12月1日に記録した679.95ドル以来の下げ幅だった。これを受けて、シカゴ日経225先物清算値は9300円(大証比390円安)を割り込んでいる。本日の日本株市場は連鎖安となり、日経平均は6月17日の直近安値9318.62円との攻防になろう。欧州中央銀行(ECB)のトリシェ総裁が景気下振れリスクに言及したことや、米国ではここ数日の経済指標が景気回復の減速を示しており、景気2番底懸念に。さらに週末には雇用統計が控えており、予想を下回る悪化ともなれば一段安の可能性もあるため、リスクを避ける狙いから押し目買い意欲は後退しそうだ。為替相場(FX)、株式市場の動向から目が離せない。